「個人の遺言でも、一般財団法人を設立できると聞いたけどメリットとは?」
「遺言を書くにあたって、大切な資産をどのような方法で遺すべきか知りたい。」
「終活を進めているけど、社会貢献ができる遺言方法はないか知りたい。」
遺言にはいろんな思いを込めることができ、「一般財団法人」を設立する方法を書き遺すこともできます。普段の生活では馴染みが少ない一般財団法人ですが、遺言で設立するメリットとはどのようなものでしょうか。この記事では、遺言で一般財団法人を設立するメリットや、知っておきたい注意点を詳しく解説します。
目次
遺言で一般財団法人を設立するメリット
普段の生活ではあまり馴染みがないかもしれませんが、遺言書では「一般財団法人」を作ることが可能です。では、一般財団法人を作るメリットとは、一体どのようなものでしょうか。この章では2つの視点でメリットを紹介します。
一般財団法人とは
一般財団法人とは設立に300万円以上を要するもので、財産の集合に対して法人格が与えられている団体です。公益財団法人とは異なり、自由な事業展開ができることが魅力です。設立後でも、公益認定を受けられれば公益財団法人に移行させることもできます。
相続対策
一般財団法人の設立は公益財団法人とは異なり、公益性を目的とする事業ではなくても設立できます。行政庁から許可を得る必要もありません。
株式会社のように利益の配当を生み出すことはできませんが、不動産などの財産を法人として所有ができます。ただし、2018年の税制改正により一般社団法人に移された財産であっても、相続税は課せられることになりました。そのため相続税の部分ではメリットが少ないと言えます。
現在は不動産管理の面や、非営利型の運営であれば非収益事業が非課税となる点について、相続対策として有効と考えられます。
社会貢献
一般財団法人は、遺言者が「今後遺しておきたい社会貢献」を目的に設立することも可能です。大切なご自身の財産を未来に役立つ団体にしてほしい、などの願いを込めることができます。
社会貢献を目指すなら遺贈という方法も考えられますが、遺贈は寄付行為であり、使用用途を細かく指定できるものではありません。一方で、一般財団法人なら設立の目的や事業内容まで細かく指定できるため、理想の社会貢献が実現しやすくなります。
遺言で一般財団法人を設立する6つの流れ
遺言を使って一般財団法人を設立する場合、以下の6つの流れが挙げられます。
遺言で一般財団法人を設立する意思を遺す
まずは生前の段階で、遺言書の作成を行いましょう。設立目的や定款に記載する内容も入れていきます。定款の内容は、一般財団法人の設立の目的、団体の名称や主たる事務所の所在地などを入れます。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第153条)
ここで、以下の注意点があります。
遺言執行者についても記載すること
一般財団法人の設立を遺言書で指示する場合、相続の開始後に遺言書の内容に沿って一般財団法人を設立できるように、「遺言執行者」を指定する必要があります。遺言執行者が定款に沿って速やかに一般財団法人の設立に向けて公証人の認証などを行う必要があるからです。
合わせて読みたい:遺言執行者とは?実行する内容・権限の書き方を行政書士が分かりやすく解説
なお、遺言執行者がいない場合でも、一般財団法人設立を遺言書で行う場合には、必ず遺言執行者を立てる必要があります。もしも指定が漏れていた場合、家庭裁判所にて選任の申立てが必要です。設立に向けて時間がかかってしまうため、遺言書に遺言執行者の指定を怠らないようにしましょう。
参考URL 家庭裁判所 遺言執行者の選任
遺言執行者が定款を作成する
遺言書を遺した方が亡くなったら、速やかに遺言執行者が遺言に沿って一般財団法人の設立に向けて準備を開始します。まずは速やかに遺言書の中身に沿って、定款を作成します。その後、公証人による認証を受けます。
遺言執行者が財産の拠出を行う
一般財団法人の設立には、300万円以上の拠出を行う必要があります。このルールは生前における一般財団法人の設立でも同様です。
遺言による設立の場合は、遺言執行者が財産の拠出の履行を行います。
設立時評議員・設立時理事・設立時幹 事の選任
定款の定めに従って、一般財団法人の設立時評議員・設立時理事・設立時幹事を選任します。このタイミングで、もしも設立時会計監査人の設置も必要な場合は、あわせて設置を進めます。
遺言書内で誰がこの役目を担うのか、細やかな指定が無い場合は、遺言執行者が定款に基づいて選任手続きを進めます。
設立手続の調査と代表理事選定
上記で選任された設立時評議員・設立時幹事によって、設立手続きの調査を進めます。また、設立時理事に選ばれている方が、この段階で法人を代表する理事を選定します。
設立の登記
法人を代表すべき者が決定した段階で設立の登記を行います。設立時代表理事が法定期限内に主たる事務所の所在地を管轄する法務局に、登記申請を行います。
参考URL 法務省 一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A
一般財団法人設立時に知っておきたい注意点
一般財団法人を設立するにあたっては、一体どのような注意点があるでしょうか。この章では注意点について、以下2つの視点から詳しく解説します。
遺言作成時の注意点
遺言書で一般財団法人を設立する場合、遺言書にその旨を正しく記載する必要があります。
遺言書にはいろんな思いを託すことができますが、一般財団法人は法人を設立するものであり、複雑な手続きを念頭に置いたうえで記載する必要があります。
先に遺言執行者について触れましたが、一般財団法人の設立は遺言執行者がいなければ設立できません。スムーズな設立のためにも、遺言執行者を遺言書の中で示すことが大切です。
遺言書は何でも自由に記載できるように感じますが、遺留分ついて考慮する必要があるなど、細やかな法律知識が必要なものです。まずは専門家に相談してみましょう。
合わせて読みたい:遺言書の作成は誰に依頼すればいいか?金融機関と行政書士などの士業に依頼する時の違い
遺言執行時の注意点
遺言書に沿って一般財団法人を設立する場合、遺言執行時にも注意点があります。そもそも一般財団法人を設立する場合には、300万円以上の財産がある必要があります。法律上、設立時には拠出する必要があるからです。
また、一般財団法人は2期連続で純資産の額が300万円を切ってしまうと、解散せざるを得なくなります。(法人法第202条2項)
つまり、最低限300万円は必要ですが、安心して運営を続けていくにあたっては、300万円以上の純資産の下で安定した運営を行う必要があります。せっかく大切な財産を使って一般財団法人を作る以上は、運営にも目を向けながら遺言書内に想いを遺すことがおすすめです。
一般財団法人運営の注意点
自身の財産を安定して一般財団法人として運営していくためには、300万円以上の資金だけではなく税金面も知っておくことが重要です。一般財団法人は赤字があった場合でも、毎年最低7万円の法人住民税を納める必要があります。また、運営中に財産が失われてしまった時点で解散する必要があるなど、細やかな運営ルールが法律上で定められています。遺贈とも比較しながら設立を検討することがおすすめです。
財産を未来へ託す遺言書作りは、専門家へご相談を
今回の記事では、遺言による一般財団法人の設立について詳しく解説を行いました。一般財団法人の設立は遺言書で示すことで、遺言執行者が設立に向けて進めていくことが可能です。しかし、一般財団法人の設立は非常に難解な手続きを要するものであり、遺言書に示す際には、専門家のアドバイスを受けながら作ることがおすすめです。
遺言書に大切な未来への思いを託したい方は、ぜひお気軽に長岡行政書士事務所にご相談ください。