
「一般財団法人が相続対策になると聞いたが、具体的にどんなメリットがあるのか?」
普段の生活では馴染みが少ない一般財団法人ですが、実は相続対策として活用することが可能です。
しかし、一般財団法人を相続対策目的で設立する場合、いくつか注意点も存在します。
そこで今回は、一般財団法人を相続対策のために設立するメリットや注意点、さらには遺言書の活用術まで、横浜市で相続をサポートしている行政書士が解説します。
目次
一般財団法人とは
一般財団法人とは、営利を目的としない法人形態のことで、「財産の集合に対して法人格が与えられている団体」ともいえます。
設立に300万円以上を要しますが、比較的自由に活動でき、事業活動を通じて収益を上げることも可能です。株式会社のように利益の配当を出すことはできませんが、不動産などの財産を法人として所有できます。
また、公益財団法人とは異なり、一般財団法人は自由な事業展開ができるため、事業活動や社会貢献など、さまざまな目的で設立されていることが特徴です。(設立後でも、公益認定を受けられれば公益財団法人に移行させることもできます)
相続に向けて一般財団法人を設立するメリット
相続に向けて一般財団法人を設立するメリットとしては、次の2点が挙げられます。
- 相続対策
- 社会貢献
それぞれ詳しく見ていきましょう。
相続対策
財産を財団に拠出(寄附)すると、その財産は「個人の持ち物」ではなく「財団の持ち物」になります。
そして一般財団法人・一般社団法人には、株式会社のような持分がありません。そのため、個人が法人に財産を移転すると、設立者が亡くなっても、その財産に対して相続税がかからなかったのです。
ただし、2018年の税制改正により、一般社団法人・一般財団法人に移された財産であっても、、同族経営をおこなっている「特定一般社団法人」の場合は相続税がは課せられることになりました。そのため、2026年時点では、相続税関連のメリットは限定的です。
しかし、遺産分割を避けたい財産、たとえば不動産や事業会社の株などを財団にまとめておけば、遺産分割トラブルを防止する効果が期待できます。自分の資産を一つのパッケージとしてまとめ、分割することなく、中長期的に管理していくことも可能なのです。
社会貢献
一般財団法人に自分の財産をまとめ、それを教育支援や芸術振興など特定の社会貢献目的のために使い続けることも可能です。
自分の財産を社会貢献に役立てる方法としては、「遺贈」という方法も考えられます。しか遺贈は寄付行為であり、使用用途を細かく指定できるものではありません。
一方で、一般財団法人なら設立の目的や事業内容まで細かく指定できるため、理想の社会貢献が実現しやすくなります。
遺言で一般財団法人を設立する流れ
一般財団法人は生前に設立するだけではなく、遺言書によって死後に設立することも可能です。
遺言書を活用した一般財団法人設立の流れを見ていきましょう。
- 遺言で一般財団法人を設立する意思を遺す
- 遺言執行者が定款を作成する
- 遺言執行者が財産の拠出を行う
- 設立時評議員・設立時理事・設立時幹事の選任する
- 設立手続の調査と代表理事を選定する
- 設立の登記をする
遺言で一般財団法人を設立する意思を遺す
まずは生前の段階で、遺言書の作成を行いましょう。設立目的や定款に記載する内容も入れていきます。定款の内容は、一般財団法人の設立の目的、団体の名称や主たる事務所の所在地などを入れます。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第153条)
なお、一般財団法人の設立を遺言書で指示する場合、相続の開始後に遺言書の内容に沿って一般財団法人を設立できるように、「遺言執行者」を指定する必要があります。遺言執行者が定款に沿って速やかに一般財団法人の設立に向けて公証人の認証などを行う必要があるからです。
合わせて読みたい:遺言執行者とは?実行する内容・権限の書き方を行政書士が分かりやすく解説
もしも遺言者が遺言執行者の指定をしていなかった場合、家庭裁判所にて遺言執行者の選任を申立てる必要があります。
参考URL 家庭裁判所 遺言執行者の選任
遺言執行者が定款を作成する
遺言書を遺した方が亡くなったら、速やかに遺言執行者が遺言に沿って一般財団法人の設立に向けて準備を開始します。
まずは遺言書の中身に沿って、定款を作成します。その後、公証人による認証を受けます。
遺言執行者が財産の拠出を行う
一般財団法人の設立には、300万円以上の拠出を行う必要があります。このルールは生前における一般財団法人の設立でも同様です。
遺言による設立の場合は、遺言執行者が財産の拠出の履行を行います。
設立時評議員・設立時理事・設立時幹 事の選任
定款の定めに従って、一般財団法人の設立時評議員・設立時理事・設立時幹事を選任します。このタイミングで、もしも設立時会計監査人の設置も必要な場合は、あわせて設置を進めます。
遺言書内で誰がこの役目を担うのか、細やかな指定が無い場合は、遺言執行者が定款に基づいて選任手続きを進めます。
設立手続の調査と代表理事選定
上記で選任された設立時評議員・設立時幹事によって、設立手続きの調査を進めます。また、設立時理事に選ばれている方が、この段階で法人を代表する理事を選定します。
設立の登記
法人を代表すべき者が決定した段階で設立の登記を行います。設立時代表理事が法定期限内に主たる事務所の所在地を管轄する法務局に、登記申請を行います。
参考URL 法務省 一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A
遺言書で一般財団法人を設立する時に知っておきたい注意点
遺言書で一般財団法人を設立する場合、次のような点に注意しなければなりません。
- 遺言執行者を選任しておく
- 定款記載事項を遺言に明記する
- 拠出する財産額に余裕を持たせる
- 拠出額を決めるときは遺留分にも配慮する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
遺言執行者を選任しておく
繰り返しとなりますが、遺言執行者がいなければ、遺言書に基づいて一般財団法人を設立することができません。
遺言執行者が指定されていないと、相続人が家庭裁判所に遺言執行者の選任を請求する必要があり、手続きが煩雑になってしまいます。
そのため一般財団法人を遺言書で設立したい場合は、必ず遺言執行者を決めておきましょう。
なお、遺言執行者は、相続人の誰かを指定することも可能です。
しかし一般財団法人の設立手続は大変なため、できれば士業などの専門家を指定しておくのが安心でしょう。
たとえば行政書士に遺言書作成をサポートしてもらう場合、その行政書士に遺言執行者まで任せられないか、もしくは信頼できる他の専門家を紹介してもらえないか聞いてみてください。
定款記載事項を遺言に明記する
一般財団法人を設立する際の「定款」には、次のような情報を記載しなければなりません。(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第153条)
- 目的
- 名称
- 主たる事務所の所在地
- 設立者の氏名または名称及び住所
- 設立に際して拠出する財産及びその価額
- 設立時評議員、設立時理事、設立時監事の選任に関する事項
- 会計監査人を置く場合は、その選任に関する事項
- 評議員の選任及び解任の方法
- 公告方法
- 事業年度
また、他にもスムーズな財団運営のために記載しておくべき事項がいくつか存在します。
これらも遺言書で指定しておくのが望ましいですが、もし具体的にどのような事項を記載すればいいのか分からないという場合は、やはり「遺言書」と「一般財団法人の定款」の双方に詳しい、行政書士などの専門家へ相談してみてください。
拠出する財産額に余裕を持たせる
そもそも一般財団法人を設立する場合には、300万円以上の財産がある必要がありますが、2期連続で純資産の額が300万円を切ってしまうと、法人を解散しなければなりません。(法人法第202条2項)
つまり、最低限必要な額は300万円ですが、安心して運営を続けていくにあたっては、300万円以上の純資産を拠出したほうがいいでしょう。
拠出額を決めるときは遺留分にも配慮する
一般財団法人への拠出額を決めるときは、遺留分にも配慮しなければなりません。
遺留分とは、一定の相続人に法律が保障している、最低限の相続分のことです。
関連記事:遺留分とは
そして財産の大部分を財団に拠出する遺言を書くと、相続人から財団に対して「遺留分侵害額請求」が行われる可能性があります。
財産の大部分を財団法人へ拠出したい場合は、スムーズな財団法人運営のためにも、事前に相続人と話し合っておくといいでしょう。
一般財団法人を遺言書で設立したい場合は行政書士へ相談!
相続税対策としての意味は薄れていますが、遺産分割を避けて財産(不動産や事業会社の株など)を管理したい場合や、特定の社会貢献目的のために遺産を使い続けたい場合などは、一般財団法人を活用するのも選択肢の一つです。
そして一般財団法人は、遺言書に記載することで設立することもできます。
ただし遺言書を用いる場合、遺言執行者を指定したり、定款記載事項を明記したり、さまざまな点に注意しなければなりません。スムーズな手続を実現するためにも、一般財団法人を遺言書で設立したい場合は、行政書士などの専門家に相談しながら遺言書を作成してみてください。
横浜市の長岡行政書士事務所も、遺言書作成をサポートしております。初回相談は無料なので、ぜひお気軽にお問い合わせください。








