複数の遺言執行者の選任は可能か?共同の執行者と予備的執行者について

記事更新日:

複数の遺言執行者の選任は可能か?共同の執行者と予備的執行者について

 

ご相談者様:70代男性

私の家族はとても仲が良く、相続で揉めるなんてことが起こってほしくないのでそろそろ遺言書を準備しようと思っています。

家族が相続で揉めることも、家族に余計な負担をかけることも望んでいません。

そのような場合、遺言執行者を選任すると良いと聞きました。

 

そこで、古くからの知人にお願いしようと思っているのですが、彼もいい歳ですから一体いつ何が起こるかわかりません。

それに1人で遺言の内容を実現するというのは、とても大変なのではないでしょうか?

安心のために何人か遺言執行者を選びたいのですが、そのようなことは可能なのでしょうか?

回答:長岡行政書士事務所 長岡

今回のご相談は、遺言執行者を複数人選任することは可能か?といったご相談でした。

結論から申し上げますと、遺言執行者は何人選任しても構いません。

また、この方ができなくなった場合にはこっちの方へ・・・といったように予め第二順位の遺言執行者を指定しておくことも可能です。

しかし、遺言執行者がたくさんいればいるほど良いというものでもなく、遺言執行者を複数人選任する場合には注意が必要です。

 

今回は遺言執行者を複数選任する、共同の遺言執行者と予備的遺言執行者について注意点も併せて解説します。

 

遺言のご相談
LINE導線
お問い合わせフォーム
受付時間:平日9時-21時(土日祝予約制)メール・LINEは24時間受付
対応エリア:横浜市・神奈川県全域・東京23区

遺言執行者は遺言の内容を実現する人

遺言執行者とは、遺言の内容を実現させるために必要な手続きなどを行う人のことです。

 

遺言執行者は相続人の代表として、遺言の内容を実現するために様々な手続きを行う権限を有しています。

また、遺言執行者は相続人の利益のために遺言の執行を行う責任があり、遺言者の意思を実現するために存在します。

 

遺言執行者には、基本的には誰でもなることができますが、未成年破産者を指定することはできません

それらの方々以外であれば、相続人のうち誰か一人を指名することも可能ですし、家族ではなく知人に依頼することも、専門家である弁護士や行政書士などに依頼することも可能です。

 

遺言執行者について詳しくは以下のリンクからご確認ください。

合わせて読みたい:遺言執行制度と遺言執行者の義務について行政書士が解説

遺言執行者の人数に決まりはない

遺言執行者は一人である必要はなく、”何人でなければならない”というような決まりはありません。

 

極端な話をすれば、1人でも5人でも10人でも・・・多いほど良いというものでもありませんが、人数に決まりはありませんから、遺言執行者は何人いても構いません。

法律でも複数選任することも想定した法律となっています。

 

民法 第1006条 遺言執行者の指定
遺言者は、遺言で、一人または数人の遺言執行者を指定し、またはその指定を第三者に委託することができる。

 

上記の法律は、遺言書で複数人の遺言執行者を指定することもできますし、指定を第三者に委託することも可能ですという内容の規定です。

この条文からもわかるように、遺言執行者は一人でも構いませんが複数人選任することもできます。

遺言執行者を複数人選任すると役割分担ができる

遺言執行者を複数人選任するメリットは、役割分担ができることが挙げられます。

 

遺言執行者の任務は、故人の財産を処分し、新たな所有者へ移転させる手続きや各相続人や遺言者等へ連絡を取る、など多岐にわたります。

遺言執行の手続きは、普段生活を送る上で当然に行う手続きでもない上に法的な手続きに戸惑うことも多くあると思います。

 

遺言執行者一人では手続きが煩雑で難しいと感じる場合には、相続人のうち1人を遺言執行者として選任し、行政書士や弁護士などを一緒に選任することで、法的な手続きは専門家へ、それ以外の手続きは遺言執行者として指定した相続人が担う、というように役割分担をすることで遺言執行者の負担を軽減することができます。

 

遺言の執行者が遺言執行者一人では厳しいと想定される場合には、遺言執行者を複数人選任しておくと良いかもしれません。

 

合わせて読みたい:行政書士が解説!遺言執行者が複数いる場合、遺言の執行はどうなるのか?

遺言執行者が複数人の場合の任務執行には注意が必要

遺言執行者は複数人選択することも可能ですし、遺言執行者を複数人選択することで役割分担をすることができるというメリットがあるというお話しをしました。

しかし、遺言執行者がたくさんいればお仕事を分担することもできるし、いればいるだけ安心!!・・・というわけでもないのです。

 

遺言執行者が多くいれば一人ずつの負担が減るなどのメリットもありますが、注意すべきデメリットもあります。

 

遺言執行者の任務の執行方法は過半数で決定

遺言執行者には人数の制限もなければ資格制限もありません。

遺言執行者を複数人選任することのメリットもありますがデメリットも存在します。

それが以下の規定です。

 

民法 第1017条 遺言執行者が数人ある場合の任務の執行
第1項 遺言執行者が数人ある場合には、その任務の執行は、過半数で決する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
第2項 各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

 

この規定には、遺言執行者を2人以上指定した場合には、原則として遺産の維持管理といった保存行為を除いて、遺言執行手続きは遺言者の過半数を持って決めるという内容が示されています。

 

過半数以上の人が良いと思った方法を採用するのですから、最善の方法が採用されるという点ではメリットとも取ることができます。

 

そもそも遺言執行者を選任することは、遺言執行の手続き等を相続人それぞれに任せるのではなく、遺言執行者に集約して手続きを簡易にできるようにすることにメリットがあります。

しかし、遺言執行すべての事項に遺言執行者の多数決が必要となると、かえって面倒にもなりかねません。

 

各遺言執行者に単独の執行権を付与できる

この点については、それぞれの遺言執行者に単独で遺言執行手続きができるように遺言書に書き加えることで各執行者の職務内容を決定することも可能であるため、デメリットを回避するという手もありますが、やはり遺言執行者を複数人選任する場合には注意が必要です。

 

むやみやたらに遺言執行者をたくさん選任することはあまりおすすめできません。

合わせて読みたい:遺言執行者に選任されたけど誰かに代わって欲しい!法改正があった執行者の代理人

遺言執行者を追加選任することも可能

遺言書で遺言執行者を複数人指定するだけではなく、相続開始後に遺言執行者を追加選任することも可能です。

一般的には遺言執行者がいれば追加で遺言執行者の選任申立てをする必要はありませんが、以下のようなケースでは追加選任することも可能です。

  1. 遺言執行者が偶数である場合
  2. 遺言執行者を定めていない部分がある場合
  3. 遺言執行者が亡くなってしまった場合

遺言執行者が偶数である場合

遺言執行者が複数人いる場合には、任務の執行は過半数の同意で決定されます。

しかし、遺言執行者が偶数の場合、可否同数で遺言執行が進まない場合があります。

 

遺言執行を進めるためにも、家庭裁判所に追加で遺言執行者の選任申立てをすることができます。

 

特定の財産について遺言執行者を定めていない

例えば、遺言執行者を2人指定していて、それぞれに役割分担を定めていたとします。

<例>

遺言執行者である長男Aは、不動産についてのみ権限を有する。

遺言執行者である長女Bは、預貯金についてのみ権限を有する。

財産が不動産と預貯金だけであれば問題はありませんが、そのほかにも財産がある場合にはそのほかの財産について権限を有する遺言執行者がいないことになります。

 

そのほかの財産について遺言執行をしてもらうために、追加で遺言執行者の選任申立てをすることができます。

 

遺言執行者がいなくなってしまった場合

遺言執行者を複数人選任し、それぞれ遺言執行者に役割分担を定めていた場合、遺言執行者が亡くなってしまうとその亡くなった方が担っていた部分について遺言執行者がいなくなってしまいます。

 

そのため、遺言執行者がいなくなってしまった部分については遺言執行者を改めて選任してもらうことができます。

 

遺言書で予備的に遺言執行者を指定することができる

遺言書に遺言執行者を選任しているにもかかわらず、遺言執行者が先に亡くなってしまったり、遺言執行の任務を行うことができなくなってしまう場合も想定されます。

 

上で説明した通り、遺言執行者がいなくなってしまった部分について改めて遺言執行者の選任を行うことは可能ですが、遺言者が依頼したい人にお願いできるとも限りません。

そのような場合に備えて、”遺言執行者がいなくなってしまった場合には”という条件付きで遺言執行者として指定する、つまり第2候補の遺言執行者を選任することができます。

 

人はいつどこで何が起こるかわかりません。

遺言執行者を複数人指定する場合には、予備的に遺言執行者を選任することも検討してみてはいかがでしょうか?

 

合わせて読みたい:相談事例:行政書士が解説!遺言に条件を付ける「停止条件付遺贈」について

遺言執行者を複数選任する場合、遺言書の書き方には注意が必要

遺言執行者を選任する場合、すべての遺言執行者が権限を持つことになります。

そのため、上でご説明した通り、意見が割れた場合には過半数の同意で決することとなりかえってややこしいことになりかねません。

 

そのため、複数選任してそれぞれの遺言執行者の負担を減らすことを目的とする場合には、遺言書で誰に権限を与える、ということや、遺言者がいなくなってしまった場合には第2順位の遺言執行者を選任するなど様々な方向へ気を配る必要が出てきます。

 

相続人の方を困らせたくなくて遺言書を用意される方がほとんどであると推察されます。

相続人の方の負担軽減のために、複数の遺言執行者を選任なさる場合には専門家である行政書士へご相談ください。

 

 

<参考文献>

・常岡史子/著 新世社 『ライブラリ 今日の法律学=8 家族法』

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
遺言に関するお問い合わせ

初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

ご相談はご来所のほか、Zoom等のオンラインでの相談も承っております。

お電話でのお問い合わせ

「遺言のホームページを見た」とお伝えください。

受付時間:平日9:00-21:00(土日祝予約制)
メールでのお問い合わせ

    初回相談は無料です。お気軽にご相談ください。ホームページからのご相談は24時間受け付けております。

    お問い合わせ種別必須

    プライバシーポリシー

    長岡行政書士事務所(以下「当事務所」といいます)が運営する「横浜で遺言の遺言を専門家が支援」(以下「当サイト」といいます)は、以下のとおり個人情報保護方針を定め、個人情報保護の仕組みを構築し、全従業員に個人情報保護の重要性の認識と取組みを徹底させることにより、個人情報の保護を推進致します。なお、本プライバシーポリシーにご同意いただける場合にのみ当サイトをご利用くださるようお願いいたします。ご利用された方は、本プライバシーポリシーの条件にご同意いただいたものとして取り扱いさせていただきます。

    個人情報の管理

    当事務所は、お客さまの個人情報を正確かつ最新の状態に保ち、個人情報への不正アクセス・紛失・破損・改ざん・漏洩などを防止するため、セキュリティシステムの維持・管理体制の整備・従業員教育の徹底等の必要な措置を講じ、安全対策を実施し個人情報の厳重な管理を行ないます。

    個人情報の利用目的

    お客さまからお預かりした個人情報は、当事務所からのご連絡や業務のご案内やご質問に対する回答として電子メールや資料のご送付に利用いたします。利用目的は主に以下に定めるものに限ります。

    • 行政書士法に定められた業務及びそれに付帯する業務を行うため

    • 当サイトを通じたサービスの提供

    • 当サイトの品質向上とそれに基づくお客様の声の実施

    • その他、当事務所の業務の適切かつ円滑な遂行

    個人情報の第三者への開示・提供の禁止

    当事務所は、お客さまよりお預かりした個人情報を適切に管理し、次のいずれかに該当する場合を除き、個人情報を第三者に開示いたしません。

    1. お客さまの同意がある場合

    2. お客さまが希望されるサービスを行なうために当事務所業務を委託する業者に対して開示する場合

    3. 法令に基づき開示することが必要である場合

    個人情報の安全対策

    当事務所は、個人情報の正確性及び安全性確保のために、セキュリティに万全の対策を講じています。また、当事務所は個人情報の取扱いに関し、従業員全員に対し適切な監督をします。

    ご本人の照会

    お客さまがご本人の個人情報の照会・修正・削除などをご希望される場合には、ご本人であることを確認の上、対応させていただきます。

    法令、規範の遵守と見直し

    当事務所は、保有する個人情報に関して適用される日本の法令、その他規範を遵守するとともに、本ポリシーの内容を適宜見直し、その改善に努めます。

    個人情報保護に関するお問い合わせ

    当事務所の本プライバシーポリシー(個人情報保護指針)に関するお問い合わせ、連絡、意見などは下記までご連絡ください。

    長岡行政書士事務所 代表 長岡真也
    233-0003
    横浜市港南区港南5-1-32港南山仲ビル202
    電話 045-844-5616



    ページトップへ戻る