「遺言書の中に、子を認知する内容が記載されていたけど、この後はどうするべき?」
「遺言書を作る際に、子を認知する内容を遺しておきたい。」
「遺言で子どもが認知される場合、知っておくべき注意点はある?」
婚姻関係ではない男女の間に生まれた子は、子の父親が「自分の子である」と認知をすることで法的な親子関係が証明できます。子の認知は、生前だけではなく遺言書の中に記載しておくことも可能です。そこで、今回の記事では遺言による子の認知について、注意点も交えながら詳しく解説します。
目次
遺言による子の認知とは
遺言書の中にはいろんな内容について記載できますが、「子の認知」に関しても書き遺すことが可能です。婚姻関係にない男女間に子が生まれた場合、母親は原則として出産という行為をともなうため、子が生まれた時点で法的な親子関係が認められています。
一方の父親の場合、血縁上の子として認めるためには自らが父であると認める必要があります。任意で認知するためには、生前に認知届を提出するか、遺言書にて子を認知する方法しかありません。下記で詳しく解説します。
子の認知とは
- 生前
婚姻関係のない男女の間で子が生まれた場合、父親が法律上は確定することができません。父親が任意で認知をするか、強制認知として裁判所に対して認知の訴えを起こす方法もあります。父親が自ら認知を認める場合は、認知届を提出することになります。
- 遺言書
家族などへの配慮など、さまざまな事情があって父親が生前に認知ができない場合、自らが遺す遺言書内で子を認知することも可能です。(遺言認知)
父親が亡くなった後であっても、認知された子は父親が生前の時から親子関係であったと認められます。また、認知された後は、子は父親を被相続人とした相続権を得ます。
遺言書で子の認知を行う際の記載方法
では、遺言書の中で子の認知を行う場合には、どのように記載すれば良いでしょうか。遺言書の中では、以下のポイントを押さえて記載します。
- 子の氏名
- 子の生年月日
- 子の本籍地
- 子の住所
- 子の戸籍の筆頭者
たとえば、遺言書に記載する場合、
「遺言者は、自分と〇〇〇〇(神奈川県横浜市××××、昭和60年〇月〇日)との間に生まれた子である〇〇〇〇を認知する。」という記述の後に、上記の情報を書き遺すことで子を認知することができます。
つまり、遺言書の中では、母親・父親・子が明確に特定されることになります。
認知する子への相続させる旨の記載もできる
これまで遺言書を開封するに至るまで、子を認知していなかったとしても遺言書を以てして認知する場合、その後に相続についても遺言書の中に示すことが可能です。たとえば、認知した子に不動産を相続させたい場合、その旨を書き遺せば不動産を相続させることができます。
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子の認知には遺言執行者が必要
遺言書の中で子を認知するにあたっては、遺言執行者が必要となります。遺言書に書き遺す内容によっては、必ず遺言執行者が必要となり、子の認知は該当するためです。遺言執行者が行う手続きの流れについては後述します。
遺言書で子を認知するとどうなる?
実際に遺言書で子が認知された場合には、どのような流れが生まれるのでしょうか。認知後に起きる変化について、わかりやすく解説します。
認知された子は相続人になる
婚姻関係以外に生まれた子であっても、遺言書内で正式に認知されれば相続人になります。相続権を有することになるため、被相続人が遺した相続財産を得ることが可能です。
以前は、婚姻関係以外で生まれた子(内縁関係や愛人関係など)は非嫡出子として、相続で得られる割合は異なっていました。しかし、2013年の法改正以降は、婚姻関係で生まれた嫡出子と同様に相続できるようになりました。
遺言執行者が執行を進める
遺言書に子の認知が記載されていた場合、遺言執行者が執行手続きを進める必要があります。遺言執行人は遺言書内で定めておくことが可能ですが、もしも定められていない場合は、家庭裁判所に対して遺言執行人の選任申立てを行う必要があります。
遺言書もしくは家庭裁判所の選任によって遺言執行人となった方は、その役職に就いた時から10日以内に子の認知届を各市町村役場に届け出します。
遺言書で子を認知する際の注意点
家族には内緒で子が生まれている場合、生前に認知をすることにはためらいがあるかもしれません。しかし、死後であっても認知をすることで、子は相続人になることができ、しっかりと財産を受け取れます。
では、遺言書の中で子の認知を行う場合には、どのような注意点があるでしょうか。詳しくは以下のとおりです。
子の承諾が必要
遺言書は思いを遺す方が自由に書き遺すことが可能ですが、子の認知にあたっては、子が生前に承諾している必要があります。(成人している場合)
認知されると、子の戸籍には認知された事実が記載されます。子によっては記載を拒否するためにも、認知を断る可能性もあります。また、相続人になってしまうことでこれまで交流の無かった方と親族関係が生まれることを拒否することも予想されます。
未成年の子は母親の承諾が必要
成人している子の場合は、子自らが認知を承諾する必要があります。しかし、未成年の子の場合はどうでしょうか。未成年の子の場合は、母親の承諾が必要となります。
こちらのケースも、母親がすでに別の方と結婚している、事情があって没交流を希望する場合には、承諾をしないことも考えられます。
遺言執行者の記載を行うこと
繰り返しですが、子の認知を遺言書の中で記載する場合は、その後の認知届の提出を遺言執行人が行う必要があります。また、認知する子に渡したい財産についても書き遺す場合、円満に相続手続きができるように信頼できる方に遺言執行者を託すことがおすすめです。
遺言執行者が指定されておらず、相続人が遺言執行人の選任を家庭裁判所へ求める場合には、選任後でなければ子の認知ができないため、相続手続きも遅れることになります。
残されるご家族がスムーズに相続手続きを進めていくためにも、遺言執行者は遺言者が指定し、遺言書内に書いておきましょう。なお、適任の方が浮かばない場合は、法律の専門家を指定することも可能です。
相続人間のトラブルが予想される
遺言書で子の認知を行う場合には、「相続人間でトラブルが起きる可能性がある」ことを予想しておきましょう。婚姻関係以外に子がいた事実は、以下2つの視点でトラブルになることが考えられます。
- 結婚前や愛人関係などで子が居ると知った相続人側
父親に家族以外にも子が居る事実を、父親の死去後に知った家族は、相当のショックを受ける可能性があります。また、財産が全く面識のない相続人となった子にも分配されるとなると、感情的になるおそれもあります。 - 認知されたことにより相続人と交流する必要がある子側
認知された子は、今後他の相続人と「親族」となるため、交流をする必要が生まれる可能性があります。自分の存在を良く思わない方と相続に関する協議をすることも高く、ストレスな状況に置かれる場合があります。
以上の1および2の視点から、遺言書における子の認知は、リスクがあることも覚えておきましょう。できれば、生前における認知も視野に入れておくことがおすすめです。
遺言による認知は専門家と共に考えよう
今回の記事では、遺言書での子の認知について、遺し方や予想されるトラブルにも触れながら詳しく解説しました。遺言認知は遺言執行者が必要な手続きであるほか、デリケートな問題を含んでいるため、専門家のアドバイスを受けながら作ることがおすすめです。
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