もし、相続人が行方不明の場合、どうなるかを考えたことはあるでしょうか。相続人がいるケースではたくさん語られることがある反面、相続人が行方不明や失踪したことは意外と語られないのではないでしょうか。では、具体的にどのようにしていくかを答えられる方はあまりいないと思います。この記事では、相続人が行方不明や失踪の場合の相続についてどのように進めていくかを「報道記者風」に解説します。相続人が行方不明の場合の相続ついて分かりやすく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
皆様、こんばんは。社会の構図をわかりやすくお届けするニュース番組「報道小路」のお時間です。アナウンサーの綾小路遺子です。
本日の特集は「遺言予報~第二夜~」。
おかげさまで「私、調べましたけど」というセリフがずいぶん定着してきましたが、今日もしっかりと調べあげて、この合成皮の手帳にまとめております。通称、白皮の手帳ですね。
本日の特集は「遺言予報~第一夜~」。「相続人が失踪し見つからない時はどうする?」というテーマに沿って、「私、調べましたけど」という決めゼリフとともに相続問題を斬っていきたいと思います。
相続人が失踪し、見つからないときには不在者財産管理人を選任し、遺産分割協議を進める方法がよく採られますよね。
そこでこの方法についてよく知る、財野誠さんにお越しいただきました。財野さん、よろしくお願いいたします。
財野「こちらこそです」
目次
不在者財産管理人とはどんなことをする人?
遺子「まずは不在者財産管理人、一般にはあまり耳馴染みがない言葉ですね」
相続時に行方不明となっている方に代わって財産を管理する人
財野「そうですよね、端的に申し上げると、相続時に行方不明となってしまった方に代わって、財産を管理する役割があるんです」
遺子「確か、相続で遺言書が無い場合には、法定相続人を調査し特定した上で、遺産分割協議を行うんですよね。連絡がつかない相続人がいたら、遺産分割協議を進めることができませんから」
財野「さすが、お詳しいですね」
遺子「私、調べましたけど」
財野「でた! かの有名な白皮の手帳ですね!」
不在者財産管理人ができること
遺子「まずは不在者財産管理人にできることとできないことを明確にしたいですね」
財野「できることは…」
遺子「財産を預かり適切に保存することと、保全のために管理すること…つまり保存行為と管理行為ですね」
財野「そ、そうなんです。たとえば保存する財産の中に不動産があったとしたら…」
遺子「ただ預かるのではなく、修繕などを行って管理することができる。建物などを管理・改良する行為は民法で認められている、とおっしゃりたいのでしょう?」
財野「は、はい…(始まったぞ…コメンテーター殺し…)」
不在者財産管理人ができないこと
遺子「できないことは、遺産分割協議の成立や管理・保全する財産の売却。つまり、不在者財産管理人が遺産分割協議を成立させるためには、家庭裁判所の許可を得た上で実施しなくてはいけません」
財野「ええ、それに加えて…」
遺子「保全・管理を行っている財産を勝手に売却したり譲渡することもできないんでしたよね。権限がないので、投機的に財産を運用することもNG」
財野「そうです(ディレクター、助けて!)」
遺子「…! ここで一端CMです」
不在者財産管理人の選任や介入が必要なケースは?
ディレクター「西園寺さん、お願いですからコメンテーターさんにコメントしてもらってください…」
遺子「あら、私、またやっちゃってた?」
ディレクター「だいぶやっちゃってます。SNSは盛り上がってますけど…」
遺子「わかったわ。ごめんなさいね、財野さん。私、つい悪い癖で…」
財野「いえいえ(よかったあ…)」
ディレクター「じゃ、CM明けます! 5秒前、3、2…」
遺子「さて、次は不在者財産管理人の選任が必要なケースについて、財野さん、教えてくださいますでしょうか?」
財野「不在者財産管理人が必要となるのはこちらのケースです。フリップでお見せしますね」
- 相続人が行方不明になっている場合
- 相続放棄の完了を目指している
- 相続財産の中に売却を目指すものがある
相続人が行方不明になっている場合
相続人の中に行方不明の方がいる場合は、遺産分割協議が進みません。しかし、
相続財産を適切に相続し、管理していくためには遺産分割協議を進める必要がありますが、相続人の中に行方不明者がいると不在者財産管理人を置いて遺産分割協議を進めます。
相続放棄の完了を目指している
高額の債務が残されている場合、相続放棄も考えられます。放棄するには相続人が一人ずつ申立てを行いますが、不在者に高額の債務が残されてしまうことが懸念されます。ですので、不在者財産管理人が介入します。
相続財産の中に売却を目指すものがある
空き家など、管理義務が残されてしまう不動産を相続し、それを売却したくても、不在者がいると同意がないため売却できません。そこで、不在者財産管理人と協議を行い、方針を決めた上で、家庭裁判所の許可をもらってが売却ができるようにします。
不在者財産管理人はどのように選任する?
遺子「ところで、不在者財産管理人はどのように選任されるのでしょうか? まずは家庭裁判所に…」
ディレクター「(ストーーーーップ!)」
遺子「…! ざ、財野さんお願いします…」
不在者財産管理人は家庭裁判所に申立てを行う
財野「か、家庭裁判所に申立てを行うことから始まります。申立てができる人は、利害関係者、つまり相続人や不在者の配偶者など、もしくは検察官です。不在者財産管理人は相続人との利害関係などにも考慮し、第三者が選ばれています。弁護士、司法書士などの専門家が選ばれることが多くなっているんですね」
遺子「そうですね。では、申立をする前に必要な点をまとめましたので、こちらのフリップをご覧ください」
・不在者と1年以上は音信不通であり、所在も掴めていないかどうか
・不在について証明する資料があるかどうか(不在者を探した郵便物が返却されている、などの資料)
遺子「なるほど、家庭裁判所は不在者が従来住んでいた住所地…」
ディレクター「(西園寺さーーーーん!)」
遺子「ううう(ストレスたまる…)! ざ、財野さんどうぞ…」
財野「不在者が従来住んでいた住所地もしくは居住していた住所地を管轄する家庭裁判所で申し立てていくんです…(なんか、だんだん顔が怖くなってきているような…)」
遺子「そのための書類はどんなものを準備しておけばいいのでしょうか…?」
不在者財産管理人申立てに必要な書類
財野「不在者の戸籍謄本や戸籍の附票、不在している事実がわかる資料などですね。詳しくは裁判所のホームページに「不在者財産管理人の選任」という項目があるので調べてみてください」
遺子「ありがとうございます。では、いったんここでCMです…」
ディレクター「CM入りましたー! 西園寺さん、素晴らしいです! この調子ですよ」
遺子「…そ、そうね。あと少しだから頑張るわ」
財野「(この人、だんだん修羅みたいな顔になってるけど、本当に大丈夫かな…)」
ディレクター「ハイ、CM明け、まとめお願いします! 5秒前、3、2…」
不在者財産管理人は急いで申立てが必要?
遺子「財野さん。ここまで不在者財産管理人について教えていただいてきましたが、相続人が行方不明になることがわかったあと、どのタイミングで申し立てればいいんでしょうか? やはり早急に申立てをし…あっ、ダメ、私…言っちゃダメ」
不在者財産管理人は相続人の不存在が判明時点で申立てをする
財野「…不在者財産管理人の業務は…」
遺子「…でもダメ、私、もう耐えられない! 私、調べましたけど! 不在者財産管理人の業務は長期化することがあるため、相続人が行方不明などの事情が発覚した時点で、早急に申立てを検討すべきなんですよね!」
財野「言っちゃったよ…そして顔がスッキリしてるよ…」
ディレクター「(こうなったらもう無理だな…)」
遺子「特に、遺産分割協議を進めたい場合、相続税の納付期限が迫っている場合、数次相続が予想される場合にはできるだけ早く申し立てたほうがいいでしょう。はいこちらのフリップにまとめています! 私、調べましたけど!」
遺産分割協議を早く進めたい場合
事業継承や不動産管理などを予定されている方は、相続後の手続きも多いため、早期に遺産分割協議を行うために、不在者財産管理人の申立てを行いましょう。
相続税の納付期限が迫ってきている場合
相続税の納付期限は「相続の開始があったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内」です。相続税が発生するケースでは、早期に専門家に税理士などにも相談しながら、不在者財産管理人の申立てを検討しましょう。
数次相続が予想される場合
不在者がいるために相続手続きが進まない間に、相続人が亡くなってしまうと、次の相続が起きるため相続人が増えてしまう可能性があります。相続がさらに複雑化しないためにも、不在者財産管理人の申立てを急ぐ必要があります。
家族が行方不明になっている場合は遺言書を作成する
遺子「すでに家族が行方不明となっており、相続時にはどうしたらいいのかと心配を抱えている方は特に、不在者財産管理人について詳しく調べてみてください。このようなケースでは、遺言書を遺しておくことで、遺産分割協議書を相続人全員で作成する必要がなくなりますから」
財野「……」
遺子「あーっ、やっぱり自分でしゃべるのが一番スッキリする! 財野さん、今日はありがとうございました! 最後に、この番組のお約束のセリフ、ご一緒にお願いします」
財野「……えっと、私…」
遺子「私、調べましたけど!!! それではみなさん、おやすみなさい」
この記事を詳しく読みたい方はこちら:不在者財産管理人とは|相続人が失踪し見つからない時はどうする?